西陣織 佐々木英人
京都西陣 西陣織
―よろしくお願いします。まず、この仕事を始められたきっかけを教えてもらえますか。
よろしくお願いします。家業として代々続いていて、僕で6代目です。僕自身は小さい頃からずっとやっていたので、修行した経験は特にないですね。いつの間にかできるようになっていたという感じでした。
それほど、幼い頃から工場に入り浸っていました。なので、特別に教えてもらった経験は特にないです。
―それほどずっと工場におられたんですね。
そうですね。西陣織が嫌と思ったこともあまりないですね。他に行く道もなかったので、この仕事を続けているという感じです。
個人的にパソコンは好きだったので、パソコンの勉強は独学でしていました。そういうこともあり、ご縁でデザイナーさんと仕事をさせてもらったこともあります。
―現在は、どんな仕事をされているのですか。
今は、織屋から糸の材料をもらって、注文された柄の帯を織るという仕事をメインにしています。最終的な織る工程ですね。そういう仕事を、機織業(はたおりぎょう)と言います。
一般的に言う機屋ですね。機屋(はたや)と織屋(おりや)はまた違う仕事なんですよ。機屋は、機があり最終的な織る仕事をする所です。それに対して織屋は、全体を統括する仕事なんです。
また、西陣織はジャガード織機という機械で織っていくのがメインです。西陣織ならではという所は、生地に層を作ることだと思います。
ベースの生地の上に緯糸をのせて織る、層の厚い織り方です。層をつけながら柄を織っていくので、分厚い積層的な生地を織ることができます。
生活できない、出来高制の問題
―職人の世界では、なかなか生活が難しいということを何度か聞きます。
そうでうすね。なかなか厳しいです。仕事がないのもそうなんですけど、出来高制ということもあると思います。月給制じゃないですからね。
出来高制なので、できなければ給料がないということです。帯を1本織って織屋に納品したら給料がもらえるという仕組みです。
―その出来高制を変えることはできないのですか。
今のところは難しいです。だけど、出来高制を変えていかないといけないでしょうね。そうしないと、職人は安定しないでしょ。
職人が安定しないと誰も入ってこない。なるべく、安定した環境作りは必要でしょうね。昔は織屋が内工場を持っていて月給制だった時代もあったみたいです。
でも僕らみたいな機屋に出す方が、リスクもコストも安くつくんですよ。電気代や機械のメンテナンス費も機屋が払うことになりますから。なので、内工場が減っていき、月給制じゃなくなったみたいです。
今は、皆さん年金をもらいながら仕事をしているから成り立つんです。同じ金額の給料だと生活はできないですよ。
年金がもらえる70歳ぐらいの世代が8割を占めています。40代で機屋をやっているというのが、4,5人です。それより上は100人単位でいるんですよ。ちょうど逆三角形の下が極細になっている感じです。
―そこまで給料が少ないという事でしょうか。
少ないというより、出来高制の単位の一つが小さいんです。例えば、1回の打ち込みで25銭の工賃としても、その25銭自体が低すぎるんですよ。40銭50銭ぐらいに上げないと若い職人さんはやっていけない。
だから今、西陣織は一つの過渡期にあると思います。どの部分を削り、人件費を抑えて、市場が多種多様な物を求めているならそれをどう作っていくのか。業界の中で整理されているような時代かもしれません。
新たな取り組み、ネットショップと「ごのみ」
―ネットショップと「ごのみ」について教えてもらえますか。
もともとパソコンをやっていたのもあって、そういうノウハウを持っていました。売り歩いたり、常に店頭に立っていると物が作れなくなるんですね。インターネットに出しておけば常時見てもらえますし、宣伝にもなるのでネットショップを立ち上げました。
―「ごのみ」ではどういったものを扱っておられるのですか
初めは西陣織だけのつもりだったんですけど、和装関係とか京都の伝統産業品なども売れればいいなと思っています。
よく、「利休ごのみ」とか言うでしょ。「~ごのみ」というのは、セレクトするという意味があるんです。そういうセレクトショップになればいいなと思って「ごのみ」という名前をつけました。
でも、今は少し方向転換をしていて。西陣織のブランドを立ち上げて、若い人に西陣織を知ってもらうという活動に切替えています。
若い人だと、着物はハードルが高くてなかなか馴染みがないと思うんです。さらに西陣織となるとフォーマルな形になってしまうので、もっとハードルが高くなる。
そうではなく、普段から西陣織を使ってもらえたらいいなと思っています。西陣織で水玉やストライプ柄を取り入れて、帽子やガマ口、名刺入れなどを作っています。少しでも興味を持ってもらえると嬉しいです。
今後は、小売店と
-今後、取り組んでいきたいことを聞かせてください。
小売店さんはお客さんと繋がっているので、お客さんが欲しい物を分かっているお店です。そういうお店が自分たちのオリジナルの商品を作りたいという場合もあるんですよ。
でも、織屋に頼んでもロット数がないと作れないと言われて、断念する人もおられたり。
僕たちは職人なので直接ご相談にも乗れるし、少ロットにも対応できる。なので、そういう着物のユーザーの「欲しい」という声を引き上げて、生産に取り掛かることはできると思っています。
なので、そういったことを今後は行っていきたいですね。そういう仕事がもらえる形で回っていくようになりたいです。
職人紹介
佐々木英人
京都西陣に西陣織職人として代々続く、西陣織 りんどう屋の6代目主人、佐々木英人。代々西陣織に関係する仕事をし、祖父の代から機屋を営む。現在は、ネットショップ「ごのみ」も運営。
着物のユーザーの「欲しい」という声を引き上げて、生産に取り掛かることなどを今後は展開していきたい。
会社情報
京都西陣織 りんどう屋
〒602-8488 京都府京都市上京区真倉町782
作者情報
編集:西野愛菜
撮影・構成:倪
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