突然決まった長野旅。それは、「ながのローカルインターンというイベントがあるので、お誘いしてみました!」という一通のメッセージから始まった。
「なんで長野のイベントに誘われるんだ!」と内心思いながら、調べてみると京都から新幹線で約4時間。料金と時間を考えれば遠いように思うけど。
考えているうちに、なんだかワクワクとドキドキが止まらなくなって。結局、行くという返事を送っていた。
さあ、長野1人旅の始まりだ。
<ローカルインターン とは>
雑誌『TURNS』が行う大学生と一緒に地方を訪れその地域の魅力を発信しよう!、というプロジェクト。第2回目となる今回は、ニッポン手仕事図鑑の編集長を講師とし、長野市を舞台に1泊2日で開催された。
1日目
12/2 am4:00。 ワクワクドキドキで少し早めに目が覚め。6:14京都駅発の始発電車に駆け込んだ。
シャッターも切れないような速さで進んでいく。新幹線ってこんなに早かったっけ。そんなことを思いながら、窓を眺めていると見たこともない景色が目に飛びこんできた。気づいた時には、長野に到着。
集合時間に間に合った事に安堵し、他の大学生さんとも合流。これから、1泊2日の「ながのローカルインターン」が始まる。
早速、長野市にある善光寺へ。善光寺の門前には、宿坊をするお寺が39軒ある。
そのうちの1つ徳寿院の住職さんにこの場所にどんな歴史があるのか、善光寺というお寺が長野で暮らす人々にとってどんな場所なのか、を話してもらった。
辺りを見回すと自転車で通学する学生、ジョギングをする方、参拝に訪れるおじいちゃん、などなど。善光寺とは長野の方が行き交う、生活に溶け込んでいるお寺のような場所だ。
本堂に入ると、どれだけ広いんだ!と驚くほど奥行きが長かった。ちょうど、お経が読まれる時で。
30秒だけ秘仏となっている仏様の幕があがり拝見できた。そんなありがたい時間もつかの間。
善光寺から歩いてすぐのビーガンお菓子のお店「ココ・シュシュ」へ。長野に移住し、お店を開かれたそうだ。
アレルギーがある子供でも食べれるお菓子を作りたい!という想いから、独学でお菓子を学び卵、乳製品、小麦粉を一切使わないビーガンお菓子を販売されている。
確かにアレルギーがある子供が最近増えていると聞いたことがある。子供でなくとも、アレルギーのある方にとっては嬉しいお菓子だ。
少しの時間だったがお話しを聞いた後は、チェックインのためゲストハウス「1166バックパッカーズ」へ。
人を案内することが好き、というパワフルな管理人さんが出迎えてくださった。こんなにも宿泊者のことを考え、場を作っているゲストハウスはあまり無いように思う。
「私たちは、クロコでいたい」という言葉には、多様な人が訪れるゲストハウスだからこその気遣いや、楽しんでもらいたいという気持ちがこもっていた。泊まっていて、なんとも心地よい場所だった。
チェックインを済ませ、まぁ1日目の夜なのだからと、みんなで打ち上げ。これもまた、長野に移住された方がやられてるケータリング「ロジェ・ア・ターブルあの料理とビールで乾杯。美味しい料理があれば、自然と話しも進む。長野での1日目を振り返りつつ、寝たのはなんだかんだ24時。
2日目
ふとiphoneを見るとam5:00。目が覚めたことが奇跡に近い。
そして、準備を済ませ向かった先は善光寺。善光寺では毎日早朝に「おあさじ」と呼ばれるお勤めがあり、薄暗い時間から人々が集まる。
もちろん12月上旬の長野だから、当たり前のように寒いのだけれど。なぜか、心地よい寒さだった。例えるなら、雪の寒さかな。
行ってみると善光寺の住職さんにお珠数で頭を叩いてもらえる「お珠数ちょうだい」を受けられた。ちょっぴり痛い。
まもなくして、本堂では秘仏の仏様の幕があがり、お経があげられる。目の前で幕があがり、何人もの僧侶がお経を唱える。その瞬間はなんとも、神秘的なものだった。
前で唱えているはずのお経が四方から聞こえ、全身に響きわたる感覚。鳥肌が立った。この瞬間を経験できただけでも、長野に来てよかったと思わせるそんな瞬間だった。
朝ごはんは、長野のソールフード「おやき」。具が野沢菜、切り干し大根、りんごなどなど種類がたくさんある。焼いてあったり蒸してあったりと、パターンも様々。まさに地元の味だ。1番美味しいと言われた「野沢菜おやき」を食べてみることに。
一口かじると、ふっくら蒸された柔らかい生地に優しい味の野沢菜がひょっこり顔を出す。確かに美味しい。長野の人に長年愛される理由が、わかった気がする。
ゲストハウスに戻り身支度を済ませ、ここから2日目がスタート。バスに乗り込み、向かった先は「いいづな学園」大自然の一角に、ポツリと幼稚園が見えてくる。そう、森の中にある幼稚園だ。
春は芽生え、夏は田植えをし、秋は紅葉、冬は雪というこんなにも自然に囲まれた場所で子供がのびのびと育つ。
「子供だけでなく、親御さんも一緒に成長して欲しい」という園長先生の考えから、親子で自然の中に遊びにいくイベントを数多く開催しているそうだ。
自然が身近にある環境の中で子供をのびのびと成長させたい、と願い相談や見学に来る親も少なくないのだとか。子供にとったら遊びつくせる格好の場所だろう。
もし子供ができたらここに入れたいなぁ、と思った。多分それは、大自然という場所の力だろう。
やはり、スケジュールはタイトなようで。またバスに乗り込む。
バスが進むにつれてどんどん山が近くなっていった。ところどころに集落も見える。毎回思うが、なんでこんな所に人が住んでいるのだろう。しばらくバスに揺られ、着いた場所は信級(のぶしな)地区。
早速、信級で唯一のお店「食堂かたつむり」へ。ギシギシギシとドアを開け、中に。机の上には、すでに日替わりランチ「のぶしな定食」が。あー、見てるだけで美味しそう。。
いただきまーす!口に入れた途端、穏やかな味が口いっぱいに広がる。おばあちゃんの味だ。どれもこれも、丁寧に調理され、訪れた者をほっこりさせてくれる味だった。
食堂のお母さんは、信級のフリーペーパー「のぶしな通信」を作られている方だった。お母さんいわく、信級の魅力は「何もないこと」。
くしくもこの集落は限界集落に認定されていて、信号も水道もない。あるのは山と湧き水、温かな人たち。だが、「何もない」からこそ時間がゆったり流れ、のんびりと生活ができるのだと思う。その証拠に、信級に移住する人が増えているのだそうだ。
信級では、炭の盆栽「炭盆」の生みの親である地域おこし協力隊の方。炭焼きの余熱で作る「信級玄米珈琲」を販売されている方に会いに行った。お2人とも移住者で、炭焼きが共通点。
お2人とも「どうやって作っているんですか。」という質問に答える顔が嬉しそうで。炭焼きが好きな方なんだろうな、と。
炭盆を触ると手が黒くなるのだけど、どれも形や表情が違う。そこに映し出される「景色」という名の小さな世界が、長野の大自然を表しているかのように見えた。
もうそろそろ日も暮れる時間。帰りの電車もあるので、そろそろ長野駅へ向かう。最後は、みんなで振り返りをしてそれぞれの帰路に向かうことになった。
実は、2ヶ月前にも一度長野を訪れていて2度目となった。今回のながのローカルインターンの目的は、長野の魅力を発信すること。名所や名物、活動をされている方を訪ねその魅力をそれぞれが発信する。
長野の魅力は、「長野という場所」なのではないかと思う。言葉を交わした方々は皆、この場所を好きになり、心地いいと思うからこそ暮らしている方ばかりだった。それは、出身者でも移住者でも同じだ。
ここで暮らしたい、ここが好きだ、と思わせる輝きが長野という場所にはあるのだと思う。
writer:西野愛菜
photographer:西野愛菜