真摯に木と向き合う家具職人 吉田欣司


家具職人 吉田欣司

家具職人 吉田欣司 YOSHIDA_WOOD_STUDIO 京都府亀岡市

昔から心の深い所で木が好き

―田んぼに囲まれた場所に工房がある吉田さん。この工房では、どんな物を製作されているのですか?

現在、無垢のオリジナル家具と建築関係の造作家具を製作しています。独立して、2年半くらい経ちますね。

―家具職人として仕事をされている吉田さんですが、もともと木に興味や関わりがあったのですか?

そうですね。大阪の箕面市出身で、実家は三代続く造園の会社です。親父も爺ちゃんも庭師なので、木に登って仕事するみたいな。今は兄貴が継いでいて、時々手伝いにも行きます。なので、昔から木と縁はありましたし、木がめちゃくちゃ好きです。心の深い所で好きなのは昔からだと思います。

―なるほど。木や職人という存在が身近にある環境だったのですね。そこから木工職人になりたい、と思うきっかけは何かありましたか?

大学生の時に「デザインで物を作りたい」と思っていたんですけど、経済学部だったのでデザイン系の会社に就職するのは難しく。それなら一度学んでみようと思い、建築とインテリアの専門学校に通うことにしました。その学校は、デザインに力を入れている学校で、特に家具制作の課題は楽しかったです。鑿や鉋などの小道具にも興味が湧きました。小道具って何千年も前からあるじゃないですか。そういうのに男心をくすぐられたというか。あと、自分で考えたものを自分で作って自分でお客さんに届けたい、とも思っていました。この頃から「家具職人になりたい」という気持ちはありましたね。

厳しい経験から独立へ

―専門学校を卒業した後は、家具関係ではない会社に勤められたんですよね。

そうです。建築設計事務所でも家具の図面を書いたりするので卒業した後は、店舗の内装などを行う大阪市内のインテリア事務所に就職することにしました。現役の子からすれば3年遅れているので、早く社会に溶け込んで上司とか部下みたいな関係性の中で仕事していきたい、という気持ちで入ったんですよ。でも、仕事はうまくいかず。社長からは仕事の出来に対して良く言われることがなく、結局その会社はすぐに辞めてしまいました。それでも、たまたま合わなかっただけと思い、次は市と仕事をしている建築設計事務所で働かせてもらうことに。

―うまくいかない事も多く、2つの会社を経験されているんですね。

そうです。2つ目の会社は、土日が休みなのでリフレッシュする意味も込め、ホームセンターで家具制作を始めました。もう、入り浸っていましたね。しだいに面白くなってきましたし、家具だけで仕事したいという気持ちが芽生えましたが、ここで独立したとして食べていけるか不安でした。毎週土日に家具を作りながら家具職人になるか半年間くらい悩み、それでもやりたい気持ちが勝って「家具職人になります」って2つ目の会社も半年くらいで辞めました。

―家具職人になる大きな決断が、ホームセンターの一角から始まっていたとは。驚きです。

でも、2つ目の会社の社長にも、仕事の出来を良く評価してもらえなかったんです。社会に対して何かできるんじゃないか、と希望を持って社会に出たのに2つの会社からそう言われてしまい、かなり落ち込みました。それでも「今の自分は底辺にいるから後は這い上がっていくしかない」という強い気持ちで家具職人になることを決めました。

―2つの会社で厳しい経験を経て、決断をされたということですね。

そうですね。ただ、お金と技術とやりたいことのバランスがとれてないまま独立しても、うまくいかないと思ったのでまず木工所で働き始めました。建築設計事務所にいたので、家具の図面は書けるしデザインもある程度できる。なら、木工機械を使えたら家具職人になれると思い、木工機械を使う大阪の木工所で働くことにしました。でも、そこがもう休みがないくらいの仕事量で、ほんと大変でした。でも、あれほどの量の仕事をさせてもらったのはありがたかったです。だからこそ、なんでも作れるくらいの技術が身に着いたんだと思います。その木工所で働き、目標としていた独立資金と技術をためて、29歳で独立しました。

胸を張れる物を作る

―独立1年目はどんな風に仕事を受けておられたのですか?

独立1年目は、自分が胸を張ってお客さんに届けられる物を作れるようになろうと決めていました。そうすれば、おのずと人も見てくれるようになると思うんですよ。だから、1年目は、下請けの仕事もあまりやらず自分でみつけたお客さんだけに対応するというスタンスで仕事をしていました。

―自分の目で見て決めるということですね。

そうですね。材木屋さんも会いに行き、自分の目で見て納得した所でしか買わないようにしています。だから、静岡まで行き納得した材木屋さんから買うようになりました。

作家も職人も極めたい

―これから新しく始めたい、と考えていることはありますか。

2つあって、1つ目が木工教室です。現役の木工職人が週1日だけ工房を開けるからそこでやりませんか、っていう木工教室をやりたいと思っています。制作途中の物も全部見せてあげられるし、リアルな仕事現場を見せてあげられると思うんですよね。

―現役の木工職人さんの工房で学べるなんて嬉しいですね。

もう1つは、作品の家具と商品の家具を両方とも高いクオリティで作れるようになること。あんまりいないんですけど、僕は両方とも作りたいのでどちらも高いクオリティまで上げていきたいです。

―作品としての家具は作家性が強い方、商品としての家具は職人性が強い方、が制作されているのだと思います。作家と職人を切り替える、スイッチはありますか?

ありますね。職人7割、作家3割くらいの気持ちです。たまに「今作らないと落ち着かへん」ってくらい創作意欲がかき立てられる時があるんですけど。その時は作家モードです。だけど普段は職人。そういう二面性が自分の中にあると感じています。40歳くらいまではそこの部分を突き詰めていきたいです。

————————————————————-
【プロフィール】
家具職人 吉田欣司(よしだきんじ)
無垢の木を使ったオーダー家具の他、建築設計事務所や工務店の造作家具を製作。ものづくりに必要な技術力とデザイン力を鍛えるため、打ち合わせからデザイン、製作、納品まで一貫して1人で行う。

【工房情報】
YOSHIDA_WOOD_STUDIO
〒621-0028京都府亀岡市曽我部町西条上久保2-2
HP : www.yoshidawoodstudio.com


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です