念珠職人 片岡正光
念珠職人として
-まず、念珠職人としてどんなことをされているのですか?
まず、仕入れてきた珠(たま)を足ふみ轆轤(ろくろ)を回しながら、珠を仕上げたい大きさに削っていきます。その後は珠を磨いて穴を開け、紐を通すところまでが大まかな流れです。
仕上げる珠の大きさが様々であるため、同じ道具が何十種類とあり使い分けをしないといけません。
―なるほど、それは神社やお寺に奉納されるのですか?
神社やお寺に奉納する為に作っている訳ではありません。どちらかと言えば、個人で買いに来られたお客様に対してや、百貨店の催事会場での販売が大半になります。
今は、念珠の他にもお守りとしてブレスレットも作っています。「念珠はお守り。もし、切れてしまった時は、身代わりになってもらった」このことはずっと頭に置きながら仕事をしていますね。
“職人”ということについて
―職人さんと言えば、堅苦しいというイメージが強いと思います。
職人さんという人が堅苦しい人だとは思われたくないですね。実際、職人さんの中でそうではない人もいると思いますが、堅苦しい人が多いことは確かです。
それはそれで別にいいのですが、頑固すぎて好きじゃないですね。どちらかと言うとオーブンに楽しくやりたいです。
だから、自分がそう思われるのも嫌です。適当に仕事するのとは意味が違いますが、そうではなく一生懸命仕事しながら楽しく仕事をしたいと思っています。
話していて「えっ、職人さんですか?こんな仕事しているんですか、嘘でしょ?本当に職人さんですか?」って言われる方がずっといいです。
―そうなんですね。では、この仕事を始めたきっかけを教えてください。
別になろうと思ってなった訳ではありません。ただ、父親が念珠職人として長年仕事をしてきました。なので、その仕事を少しずつ手伝うようになり、他にやることもあまりなかったから成り行きで始めた、という感じです。
お客さんに喜んでもらえるので、悪い仕事だと思わないので、続けています。でも今は、やらされている訳ではありませんが、作業をやっているだけにいると感じています。
本当はこの仕事を好きになってどれほど良い物ができるか、どれだけ大変な作業でも一つの物を作る喜びを感じられるか、このことが出来ればいいと思いますが、まだそこまでは出来ていないと実感しています。なので、「自信を持って頑張っています」なんて事はあんまり言えません。「まだまだやな」と思う事の方が多いです。
仕事に対する姿勢
―若い人が仕事をしに来た時はどうですか?
こんな物を作りたい、こんな技術を学びたいと思って若い子が来たとします。学びたい技術の前段階でやらないといけない仕事をやって貰おうとすると、「自分のしたい事と違うからしたくない」、「仕事を辞めます」と言う人が多いです。
つまり、“自分がしたいと思っている仕事ならやります。でも、それほどしたくない仕事をやってと言われたら辞めます。”と思っているということですね。
こう思っているのは、職人の仕事に対してだけではなく、多くの仕事に対して言えることです。こんな風に考えている子達は自分が本当にやりたいことでも我慢できないと思います。
その理由は、安易に考えているからです。嫌だけどこれをしたいから我慢するという事と、したくないから辞めますというのは、結局は我慢が足りてない事になります。必要最低限、例えば覚えていく過程の問題でやることというのは大切なこと。それをやらないと次に進めないのですから、嫌でもやらなければいけません。それを、自分がしたいことと違うことだからやりませんと言うのは違います。
でも、全ての事を我慢するのではなく嫌なものは嫌、と言うことも大切な事。そうではなく、どんなことでもすぐに嫌だと言うのはやめた方が良いということが言いたいです。
まず、考えることが必要だと思います。やりたくないことであってもそれでもまず”一回やってみよっかな”そう思って欲しいです。
―では、今の若者に大切にしてもらいたいと思うことはありますか。
職人になりたいと思っている人だけでなく、広い意味で若い人たちに言いたいことは、何でも興味を持って欲しいということです。
最終自分がその仕事をどこまで好きになれるかが大切ですが、欲がそこにあってもいいと思います。例えば、お金儲けをしようとして技術を磨こうでもいい。理由が何であっても、そこから少しずつ成長していくのだと思います。
だから、向上心を持つということは大事なことですし、何でも興味を持ってもらいたいです。
職人紹介
片岡正光
明治から続く片岡念珠工房の3代目。念珠の他、お守りなどを製造販売している。
工房情報
片岡念珠工房
〒605-0971 京都市東山区今熊野椥ノ森町7
TEL:075-541-5045
作者紹介
編集・撮影・構成:西野愛菜