金箔職人 西山大介
作っても作っても、追いつかない状況でした
ーよろしくお願いします。西陣の路地を少し入った所で行っておられるのですね。。昔からここで、やられているのですか。
よろしくお願いします。僕がまだ小さい頃は、近くの小さなところで、作業をしていました。それから、今の場所に移って来ました。
今は、1人で仕事をしていますが、昔はたくさんの方がいましたよ。僕が、小さい頃は手伝わさせられていました。いったんは就職したんですけど、25歳ぐらいで実家に戻ってずっとやっています。
ー 一度就職されたのに、金箔職人になったのはなぜですか。
小さい頃から手伝っていた、おやっさんがやっていたから、ですかね。その時はもうバブルもあったし、仕事が回らないほどあったので。作っても作っても、追いつかないという状況でした。
なので、修行という意識もなく始めていました。僕が本格的に仕事を始めた時は、サラリーマンよりこの仕事の方が給料が良かったんですよ。だから、この仕事に就いたというのもあります。
ここまで、需要がなくなるとは思っていませんでした
ーバブルの頃は、そんなに景気が良かったんですね。現在はどうでしょうか。
景気は、もの凄く悪いですね。果てしなく悪い。まず、材料が高い。材料を材料屋さんから仕入れるのですが、主に仕入れるのは、金箔、銀箔、和紙などです。
僕は、その仕入れた和紙に金箔を貼る仕事をしています。それを切り屋さんに渡し、糸状に裁断してもらうんです。その糸状になったものを引箔と言います。その引箔を、織屋さんに納品するという事ですね。基本的には、ここで作っている「引箔」というのは、西陣の帯の材料なんです。
ーそうなんですか、驚きです。
本当は、引箔を使ってるから高いんですけども。利益率の良いのを、織っていくからという事です。つまり、引箔だと織り手間が高い、売値が変わらない。それならもう使わないようにしようということですね。
なので、転写箔になってしまったんです。手作りと色味を似せて、似たものを転写で作るように。織ると、全然違うんやけれども。でも、それすらも利益にならない。
じゃあ引箔はもう使わない、という事に。今は、そんな状況です。取り合えず、需要がないという事だね。そんな状況で後を継ぐなんでできないでしょ。
ー確かに、後を継ぐのが厳しそうですね。若い人が少ないイメージがあります。。
50歳ぐらいで、僕が若い方です。平均年齢は、60歳は軽く超えてると思いますよ。だから、金箔職人が1軒2軒、残っても駄目なんですよ。
だから、業界全体が残っていかないといけないと思います。最終的に、切ってもらって織ってもらって商品になりますが、全体がダメな状態なんです。
生活できるような仕事があれば、継ぐ人も出てくると思いますが、なかなか難しいです。継がせようとも思わないですしね。僕の所も後継者はいないですし。
ここまで、需要がなくなるとは思っていませんでしたよ。誰もこんな状況になるとは、思ってなかったと思います。景気が悪くなっても生活ぐらいは出来るとは思っていましたしね。
同業者の横の繋がりが必要ですね
ーそのような状況でも西山さんは、デザイナーと組まれて作られていると思います。
そうですね。金箔を帯の材料として作るのではやっていけないので、いろんなものに使えないかという事で行っています。なので、今は可能性を探っているみたいな感じです。
ーその可能性を見出せている所は、ありますか。
今は、皮。あるプロジェクトで、独自のコーティングや、加工をしてもらった皮に箔を貼るという事をしています。
なので、基本的には素材なんですよ。素材としていろんな所に売っていき、いろんな所で使ってもらおうと思っています。
どっちかというと、僕らの仕事はずっとこもってやる仕事なんです。織屋さんがいはって、僕らがいて。もう勝手に注文が来る状態。
なので、ずっと仕事をしてても仕事が来る。元々そういう流れで、受け身っぽい仕事の流れなんです。そこから、発信していくのはなかなか大変。
もともと受け身の体制やったのに、それを発信していかなあかんという事になるとね。発信する人が周りにいたらいいけど、いいひんかったらどうしよかと思いますよ。
ーなるほど。では最後に、需要が減ってきている中で、これからも続けていくには、どうするべきだと思いますか。
僕らの同業者の横の繋がりが必要だと思います。今までは、あまり交流がありませんでした。技術を外に出さない、見せない。どんな材料を使っているかも分からないrという状況でした。
でも、今そんなことをやっていてもね。ダメだと思うので。こんなんいいのあるでとか。共有して繋がらないとね。まわりで盛り上げて、全体でやっていかないと思います。
織人紹介
西山大介
西山治作商店、金箔職人、西山大介。親が行っていた仕事を継ぐ。
主な仕事は、帯に金箔を貼る事。帯以外にも金箔を様々な物に使えないか、デザイナーと組むなどさらなる可能性を探っている。
工房情報
西山治作商店
〒603-8223 京都市北区紫野東藤ノ森町2
西山治作商店 webサイト
作者紹介
編集・構成:西野愛菜
撮影:田安仁