学び続ける手捺染職人 (京都市 友禅染)


友禅染職人 水口義治

学び続ける手捺染職人 友禅染職人 水口義治

Pagongでの仕事

―よろしくお願いします。初めに、この仕事に就くまでの経緯を聞かせて下さい。

よろしくお願いします。私が22歳の時から染めの仕事をするようになりました。始めた頃は、昔ながらの様々な染めをやっていました。振袖も染めたことがあります。

ですが、昔ながらの染めが少しずつ衰退していき、この会社では「手捺染(てなっせん)」という染色方法で染めています。手捺染とは、1色に対して型を1枚使い、型をおいた型枠に染料を流しその上をスケージというヘラで染めていく方法です。

私は、22歳の頃から始めたので職人歴は37年ぐらいですかね。

―では、ここではどういった仕事をされているのですか。

洋服の生地を手捺染で染めることを主にしています。和装の染物だと幅が、大体35㎝ほどあります。ですが、ここでは洋服の生地を染めているので、約3倍の112㎝ほどの幅の生地を染めています。

また、柄によって型の枚数が違うので、染め上がる時間が変わってきます。枚数が少なければほんの1時間で出来ますし、多くの型を使うものは半日ぐらいかかります。

柄によってそれだけの枚数の型を使わないといけないので時間もかかりますし、それだけ多色になります。

では、どうやって多くの色を定着させているかというと、30mほどある台の下から蒸気を出し、染料を生地に定着させています。

なので、夏場は外と蒸気の暑さでものすごく暑いんですよ。約50度まであがりますからね。私たちは慣れているので大丈夫ですけど、一般の方なら多分この工場に30分もいられないと思いますよ。

―そこまで暑くなるのですね。でも、一般の人が中に入れる機会もあると聞きました。

『パゴン1日弟子入り体験』というものもあります。お客さんに自分で配色と染めをしてもらって世界に1枚だけのカットソーを作ってもらいます。その時はお客さんに工場まで入ってもらい、実際に型を使って体験をして頂きます。

実際に体験して頂くので、型を少しでも間違えると駄目になる苦労は体験に来られた時にかなり理解して頂けます。「値段が高いのは理解できる」と体験して頂くお客さんによく言ってもらえます。

洋服の生地を手捺染で染めることを主にしています。和装の染物だと幅が、大体35㎝ほどあります。ですが、ここでは洋服の生地を染めているので、約3倍の112㎝ほどの幅の生地を染めています。

職人としての経験と喜び

―仕事をするなかで、緊張する場面もあったりするのですか。

やっぱり色間違いをしてはいけないという所ですね。例えば、桜の柄は型を一つの所に23枚合わせないといけないですし、葉っぱの所をピンクの色で染めてしまうともう駄目です。そうならないように、染出し伝票を見て色を間違えないように確認をしています。

それともう一つは、型によってどの種類のスケージを使うのか選択しなければいけない所ですね。スケージという道具を使って染めていきますが、先端部分の柔らかいもの、固いもの、尖がっているもの、丸いもの、というように種類があります。

尖がっているスケージは、生地の上にのせる糊がかすり切れます。丸いスケージは、斜めになっているので糊が入りやすい。どのスケージを使うのか柄によって選択しなければいけません。

その選択は、職人の勘です。今までの経験の積み重ねで、こういった柄であればこのスケージというように体に染みついています。

また、スケージを使う時の力加減によって、均一に染まらないことがあるので、左右どちらにどれぐらいの力をかけるかも重要です。

もちろん、間違えてしまい失敗することもたくさんあります。失敗した時は、背中に冷たい汗が流れますけど。

―なるほど。多くの失敗があったと思いますが、仕事の喜びを感じる瞬間はどんな時でしょうか。

やはり、自分が染めたものをお客さんに着て頂いているところを見ることが一番の喜びです。一度東京に行った際に、私が染めた柄のポロシャツを着た女性を見かけました。それを見た時は、本当に感動しました。

パゴンに来るまで様々な型を染めてきましたけど、染めたものが自分の目に止まることがありませんでした。何十年やってきましたけど、どこで売られているのか分からない状態で染めていました。

でも、パゴンでは製造販売をしているので買って下さる姿、使って下さる姿を見ることができます。それができるのが、喜びですね。ちなみに、全国で売っている全てのパゴンの商品は本店でしか染めていません。

職人の勘です。今までの経験の積み重ねで。スケージという道具を使って染めていきます。

無限大に勉強

―今後も染めの仕事でしょうか。

そうですね。かなりキツイ仕事ですが、体が動く限りは染めの仕事をしようと思っています。でも、それだけキツイからこそやりがいがあります。

昔、先輩に「この業界は死ぬまで勉強や」と言われました。最初は先輩に教えてもらい、そこに今までの経験で身につけたことを合わせていく。先輩の真似のようなものですし、毎日が勉強です。

パゴンでは、Tシャツの生地も染めますし、普通のツルッとした生地も染めたりします。染める生地がどんどん変わるんですね。だから生地が変わる都度、スケージの選択が変わります。やはり無限大に勉強しないといけないってことですね。

―では、最後に今後の意気込みを聞かせて下さい。

やはり、先輩が掲げていた「死ぬまで勉強」。生地がどんどん変わっていくので、同じようにしていたのでは駄目です。

そして、熱く染めるのではなく冷静に失敗なく染めていくことが大事だと思います。染めていて「ちょっと不本意だな」ということもあれば、「あっ、これうまいこといったな」ということもあります。うまいこといった実感が湧く仕事を多くしていきたいです。

終わりはないと思っているので、他人の意見も聞きながら柔軟な考え方を持ち、これからも頑張っていきたいです。

パゴンでは、Tシャツの生地も染めますし、普通のツルッとした生地も染めたりします。染める生地がどんどん変わるんですね。だから生地が変わる都度、スケージの選択が変わります。やはり無限大に勉強しんならんってことですね。

織人紹介

水口義治

22歳の頃から染めの仕事を始め、職人歴は36年。2004年から株式会社 亀田富染工場/Pagongの手捺染職人として働き始める。これまでに、小巾友禅・ぼんち柄・四つ身・中振・ネクタイ・婦人服のプリントなどを手掛ける。

会社説明

株式会社 亀田富染工場/Pagong(パゴン)

亀田富染工場は大正8年、初代亀田富太郎によってわずか四畳ほどの小間で京友禅の染屋を開いたのが始まり。戦後の経済成長期には月何万反ものきものの生地を染めていたが、ライフスタイルの変化とともに人々の装いも洋服へと移行。

「このままでは京友禅が衰退してしまう」と危機を感じた3代目の亀田和明が友禅柄でアロハシャツを仕立てたことから、友禅染アロハシャツ&カットソーのブランドPagongがスタートした。

Pagongでは伝統の職人の技を生かし、メイドインジャパンにこだわったものづくりをしている。伝統文化と現代の感性が融合した商品で、和の意匠の持つ美しさ・華やかさ・力強さを伝えている。

会社情報

株式会社亀田富染工場/Pagong本店

〒615-0046 京都市右京区西院西溝崎町17
TEL.075-322-2391 FAX.075-322-2459
店舗営業時間 11:00~18:00(不定休)
Pagong webサイト

作者情報

編集:西野愛菜
撮影:田安仁
構成:倪

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