ピンクのストライプが躍る「燕三条工場の祭典」


新潟と言えば米と日本酒と言われるように、訪れてみると辺り一面が田んぼだらけだった。

「燕三条工場の祭典」

今年で5回目を迎えるこのイベント。

名前を聞いたことがある人は、どれ程いるだろうか。または、ピンクのストライプを見たことがある人はいるだろうか。

その名の通り、舞台となるのは新潟県燕三条地域とその周辺地域。辺り一面が田んぼの土地。

そんな場所に車で6時間かけて、想いのしおり・編集長西野が訪れてみることにした。

<燕三条工場の祭典 とは>

「燕三条 工場の祭典」は、2017年10月5日(木)から8日(日)までの4日間、金属加工の産地、新潟県燕三条地域とその周辺地域で開催されるイベント。

日本を代表する産地で多種多様な製品を産み出している KOUBA(工場)や、米どころとしても有名なこの地で農業に取り組む KOUBA(耕場)。

そんな普段は閉じられている場所を訪れ、職人たちの手仕事を間近に見て、彼らと対話し、ワークショップに参加することができる。また KOUBA(購場)では、この地でつくられた産品を手にすることも可能。

(燕三条工場の祭典 公式HPから一部引用)

訪れた人は皆、このストライプを目印にしているのではないだろうか。

ピンクのマスキングテープで作られた、ストライプが印象的なこのイベント。

開催場所やスタッフのTシャツなどが、ピンクのストライプに染まる。訪れた人は皆、このストライプを目印にしているのではないだろうか。

パン切り包丁を生んだ工場「15 包丁工房タダフサ」さん。パン切り包丁はもちろんの事、家庭用や肉用、刺身用の包丁など数多くの包丁を製造している。

そんな目印を探しながら車でまず向かったのは、パン切り包丁を生んだ工場「15 包丁工房タダフサ」さん。

パン切り包丁はもちろんの事、家庭用や肉用、刺身用の包丁など数多くの包丁を製造されている工場だ。

皆さん興味深々で顔をのぞかせながらじっくり見入っている様子。またしても、ピンクのマスキングテープ。通路標識やサインとしても使われている。

工場の中に入ってみると、工場見学や包丁研ぎ直し教室が行われていた。皆さん興味深々で顔をのぞかせながらじっくり見入っている様子。

またしても、ピンクのマスキングテープ。通路標識やサインとしても使われている。

そして、工場の祭典が開催されるようになったことがきっかけで作られたという、1階入り口と2階にあるショールーム。

工場の祭典が開催されるようになったことがきっかけで作られたという、1階入り口と2階にあるショールーム。数多くの包丁が並べられ、どんな包丁なのか、どんな時に使うのか説明の言葉が飛び交っていた。

工場の祭典では運営陣が指示するという訳ではなく、各工場の方達が工夫をしながら見学、体験、販売の方法を考えている。だからこそ、タダフサさんでは自主的に包丁のショールームが作られた。

運営陣だけでなく、工場の方達も一丸となって開催されているのが工場の祭典の魅力の一つである。

ピンクのストライプが躍る「燕三条工場の祭典」

社長さんのアイデアでオーディオ機器を製造するようになったのだとか。シャッターを上げて中に入ってみると、見慣れない形のオーディオ機器が。

続いて訪れたのは、オーディオ機器を製造している「14 長谷弘工業」さん。社長さんのアイデアでオーディオ機器を製造するようになったのだとか。

シャッターを上げて中に入ってみると、見慣れない形のオーディオ機器が。実際に音楽も流されていて、工場の機械音と共に美しい音色が響いていた。

  社長さんの遊び心がつまった展示には、子供も興味深々。 こうしたイベントが子供さんがものづくりに興味を持つ、きっかけになっているのかもしれない。

社長さんの遊び心がつまった展示には、男の子も興味深々。こうしたイベントがものづくりに興味を持つ、きっかけになっているのかもしれない。

さてさて、どんどんいくよ。

近いからという事で、「16 角利製作所」さんへ。ここの工場は、大工道具専業メーカーとして主に、鉋(かんな)の刃研ぎをしておられる。

近いからという事で、「16 角利製作所」さんへ。

鉋の刃、と聞けば血が騒ぐ。つい、まじまじと見てしまうのはなぜだろうか。刃先の輝きは、ずっと見ていたいくらいだ。

鉋の刃、と聞けば血が騒ぐ。

つい、まじまじと見てしまうのはなぜだろうか。刃先の輝きは、ずっと見ていたいくらいだ。

透かして見た時にみえる、光で反射した白の線。手で研ぐとどうしてもまっすぐにならないんだよね。それがこんなにもきれいになるなんて。恐るべし。

 親切にも工場の中を案内してもらえた。

親切にも工場の中を案内してもらえた。機械で研ぎを行うが、少しずつ形の違う刃だからこそ微調節が必要になってくる。

その微調節を職人の手と目で行っているのだとか。もう、長年のカンと感覚がものを言う世界である。

火花が迸る様子を見ているとかっこいいなぁ、と。若い方もおられ、技術を教えることに四苦八苦しているのだとか。

火花が迸る様子を見ているとかっこいいなぁ、と。若い方もおられ、技術を教えることに四苦八苦しているのだとか。

80代の職人もいるが、20代でまだまだ修行中の方もいるようだ。こうして技術が受け継いでいかれる。

 壁に書かれた、数字。これは、温度を何度まで上げるか記されたものだ。 ここ以外でも至る所で目にすることができる。

壁に書かれた、数字。これは、温度を何度まで上げるか記されたもの。ここ以外でも至る所で目にすることができる。

紙に書くのがめんどくさいのか、すぐに見ることができるから壁に書くのか。工場では、壁が黒板変わりなのだ。

そして、お昼の時間も近づき「i1  三条ものづくり学校」へ。廃校になった学校を改装し、各教室に企業などが入り構成されている建物だ。

そして、お昼の時間も近づき「i1 三条ものづくり学校」へ。廃校になった学校を改装し、各教室に企業などが入り構成されている建物だ。

開催期間中は、この建物がメイン会場となっている。ちなみに、燕三条工場の祭典をめぐるのに欠かせないブックレットは、各工場かものづくり学校にしか置いていない。

さて、ピンクの入り口をくぐると体育館や各教室でワークショップや展示が開催されていた。

廊下には、燕三条の工場の簡単な地図が。 工房の名前とキャッチフレーズが並ぶ。

廊下には、燕三条の工場の簡単な地図が。工房の名前とキャッチフレーズが並ぶ。

きっと試行錯誤の中で、無くなる工場もあったに違いない。そんな歴史を感じるものであった。

中をぐるっと回った後は。。。

お昼!

お昼!という事で、体育館から裏側に出てお昼ご飯。たこ焼きは美味しいね。

という事で、体育館から裏側に出てお昼ご飯。たこ焼きは美味しいね。屋台のたこ焼きが食べたくなるのは、なぜだろう。。

こうやって屋台形式で食べ物があるのは、子供連れの家族にとっても嬉しい。

見ていると、運営者も屋台でお昼を食べていた。 ついこういったイベントでは、運営者と訪れた人を分けてしまうけど、混ざっている感じが面白い。

見ていると、運営陣も屋台でお昼を食べていた。ついこんなイベントでは、運営陣と訪れた人を分けてしまうが混ざっている感じが面白い。

 お昼もそこそこに食べたあとは、「03 三条スパイス研究所」。まさに写真映えしそうな巨大な建物。

お昼もそこそこに食べたあとは、「03 三条スパイス研究所」。まさに写真映えしそうな巨大な建物。車から降りた途端、スパイスの香りが鼻に付く。

「スパイス=異なるものをミックスして新しい何かを生み出すこと」という考え方の元活動をされている場所だ。

一端ここで休憩。車の中で一息しながら、ブックレットを見ていると。。。

真横にあるのに、音に気付かなかった。「01 三条鍛冶道場」さん。

真横にあるのに、音に気付かなかった。「01 三条鍛冶道場」さん。 ではでは、行きますか。

ではでは、行きますか。

「道場」と名付けられたこの場所では普段、鍛冶関連の後継者育成やものづくり体験研修が行われている。開催期間中は、包丁づくりや鉄を叩く体験が開催されていた。

「道場」と名付けられたこの場所では普段、鍛冶関連の後継者育成やものづくり体験研修が行われている。開催期間中は、包丁づくりや鉄を叩く体験が開催されていた。

子供連れの家族が多く、親が横目で見ながら子供が鍛冶職人さんから教わっている姿。そんな姿を見ているとなんとも微笑ましく思えた。

職人さんも嬉しそうに、なんとも自慢げに話している。

職人さんが火に金属を入れる姿。 熱いでしょ、と思うけど。多分、長年の経験で手の皮が分厚いんだろうなぁと思いながら。 ある意味、炎の中の手。

職人さんが火に金属を入れる手。熱いでしょ、と思うけど。多分、長年の経験で手の皮が分厚いんだろうなぁと思いながら。ある意味、炎の中の手。

一声かけてみると、ザッ鍛冶のおっちゃんと言えるほどの人柄の方だった。

体験が終わると、鍛冶職人さんの一服の時間。タバコ。

なんとも言えない、かっこよさ。一声かけてみると、「ザッ鍛冶のおっちゃん」と言えるほどの人柄の方だった。こうやって職人さんと気軽に話せると楽しいね。

さてさて、この時すでに14時30分。まだまだめぐれると油断していると、終了時間がどこの工場も15時まで!

ほとんどの開催場所が15時までなのでご注意を。。。

それでもギリギリ間に合うかと思い、最後は「10 鑿鍛冶 田齋」さんへと車を走らせる。ちょっとオーバーしながらも、到着。やっぱりピンクが目印だな。

それでもギリギリ間に合うかと思い、最後は「10 鑿鍛冶 田齋」さんへと車を走らせる。

ちょっとオーバーしながらも、到着。やっぱりピンクが目印だなぁ。

目を向けると、職人さんが穴のように窪んだスペースに身を入れながら作業をされている。鑿鍛冶ならではの姿だ。

工場に一歩踏み入れてみると、「カンカンカンカン」と金属を叩くリズムの良い音が聞こえてきた。

目を向けると、職人さんが穴のように窪んだスペースに身を入れながら作業をされている。鑿鍛冶ならではの姿だ。

叩いては火の中に入れ、火から出してはまた叩く。

叩いては火の中に入れ、火から出してはまた叩く。これを何度も何度も繰り返しながら、鑿の形を作り出してゆく。

訪れた方々を前に、作業の手を止めながら説明を繰り返す職人さんの姿。「普段は一言もじゃべらずやってるんですよ。でも、わざわざ来てもらえたのは、やっぱり嬉しいし。知ってもらいたいので」と。

訪れた方々を前に、作業の手を止めながら説明を繰り返す職人さんの姿。「普段は一言もじゃべらずやってるんですよ。でも、わざわざ来てもらえたのは、やっぱり嬉しいし。知ってもらいたいので」と。  職人さんが楽しさや嬉しさを感じられているのも、燕三条工場の祭典が続いている理由の一つかもしれない。

職人さんが楽しさや嬉しさを感じながら、開催されているのも燕三条工場の祭典が続いている理由の一つかもしれない。

長年鑿鍛冶として叩いてきた「手」は、何も言わなくても深みがある。やっぱり見とれてしまう。

そして、なにかと終了時間を30分以上オーバーしている所を見ると、職人という人達は話し出すと止まらないらしい。

そんな関係が築けているからこそ、工場の方は「やらされている」ではなく自らが楽しみながら試行錯誤を繰り返しながら、工場をオープンにすることができているのだと思う。だからこそ、その雰囲気が訪れる者にも伝わり、リピーターを増やしているのではないか。

燕三条工場の祭典は、今年で5回目を数える。来場者数も年々増すばかりである。そして、このイベントを見本にして他の産地でも工房開きをするイベントが開催されるようになってきた。

今回、訪れてみることで探してみようとしたことの1つである。なぜ、このイベントが回数を重ね、手本にされるまでになったのか。

それは、付かず離れずの人間関係が工場の方と運営陣の方との間でできているからではないだろうか。手を貸す所は手を貸し、離す所は離す。そんな関係。

そんな関係が築けているからこそ、工場の方は「やらされている」ではなく自らが楽しみながら試行錯誤を繰り返しながら、工場をオープンにすることができているのだと思う。どこを見ても、ピンクのストライブが躍っているかのように、楽し気であった。

だからこそ、その雰囲気が訪れる者にも伝わり、リピーターを増やしているのではないか。

そしていつの日か大きなイベントという形ではなく不定期で工場がオープンになり、訪れる者を出迎え、交流が生まれる姿ができているのではないか。そんな風に想像してしまう場であった。

writer:西野愛菜
photographer:akitsu okd


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