着物が正絹かの見分け方は?光沢や手触りの違いと家庭で試せる検査

着物を手にしたとき、それが「正絹(しょうけん)」なのか、それとも化学繊維なのかを判断するのは初心者にとって難しい課題です。正絹はシルク100%の生地を指し、その価値や着心地、お手入れ方法はポリエステルとは大きく異なります。大切な着物の価値を正しく知り、長く愛用するための見分け方のコツを詳しく解説します。

目次

着物における正絹の見分け方の押さえどころ

着物が正絹かどうかを見極めるには、五感を使って総合的に判断することが大切です。見た目の美しさだけでなく、触れたときの温度や音、さらには繊維の状態を確認するいくつかのステップがあります。まずは、どこに注目して確認を始めるべきか、基本的なポイントを押さえておきましょう。

視覚確認の項目

目で見て確認する際の最大のポイントは、光の反射の仕方です。正絹は繊維が三角形の断面を持っているため、プリズムのように光を分散させ、内側から発光するような柔らかく上品な光沢を放ちます。一方、ポリエステルなどの化学繊維は、光が表面で強く反射するため、少しギラついたような、あるいはプラスチックのような平坦な輝きに見えることが多いのが特徴です。

また、生地の「落ち感」にも注目してください。正絹は適度な重みとしなやかさがあり、ハンガーにかけたときに体に沿うような美しいドレープ(曲線)を描きます。化学繊維は生地に独特の硬さがあるため、折り目が鋭すぎたり、全体的にふんわりと浮き上がって見えたりすることがあります。色味についても、正絹は染料が芯まで浸透するため、深みのある落ち着いた発色になりますが、化学繊維は色が表面に乗っているような、少し鮮やかすぎる印象を与えることがあります。

触覚確認の項目

手で触れたときの感覚は、慣れてくると非常に信頼できる判断材料になります。正絹の大きな特徴は、肌に吸い付くような「しっとり感」です。これは絹が動物性たんぱく質でできており、微細な水分を保持しているためです。触れた瞬間に体温が馴染み、じんわりとした温かさを感じることができます。

逆に、ポリエステルなどの化学繊維は、触れた瞬間に少しヒヤッとした冷たさを感じることが多く、手触りも「さらさら」あるいは「つるつる」としています。また、生地同士をこすり合わせたときに「絹鳴り(きぬなり)」と呼ばれる「シュッ、シュッ」という独特の摩擦音がするのも正絹ならではの特徴です。これは繊維の表面にあるセリシンという成分がこすれ合って出る音で、化学繊維では再現が難しい現象です。指先で生地を軽く握ってみたときに、反発力が強すぎず、手のひらの中で優しく収まる感覚があるかどうかも確認してみてください。

家庭での簡易検査

家にある道具を使って、より確実に判別する方法もあります。最も有名なのは「燃焼テスト」です。着物の目立たない部分(縫い代の端など)から数ミリだけ糸を抜き取り、火を近づけてみます。正絹であれば、髪の毛が焼けるような独特のタンパク質が焦げる臭いがし、灰は指先で押すと簡単に崩れて黒い粉末状になります。

もし、火を近づけたときにプラスチックが溶けるような嫌な臭いがしたり、燃えた後の先端が硬い玉状の塊になったりする場合は、化学繊維である可能性が非常に高いです。また、水滴を数滴、目立たない場所に垂らしてみる方法もあります。正絹は水分を吸収しやすく、乾いた後に「水ジミ」ができやすいという繊細な性質を持っています。ポリエステルは水を弾く力が強いため、水滴が玉のようになって表面を転がることが多いです。ただし、これらは生地を傷める可能性があるため、必ず自己責任のもと、見えない場所で少量ずつ試すようにしてください。

専門家に頼る基準

自分の判断に自信が持てない場合や、非常に高価と思われる着物の場合は、無理に自分で判断しようとせず、プロの力を借りるのが賢明です。特に近年の化学繊維は「東レシルック」などのように、正絹と見紛うほどの質感を持つ高品質なものも増えています。これらは燃焼テストをしない限り、素人の目や手触りだけではプロでも一瞬迷うほど精巧に作られています。

専門家に依頼する基準としては、「形見分けで受け取った価値の分からない着物」「産地証紙(大島紬や結城紬など)が見当たらないもの」「売却を検討しているもの」などが挙げられます。着物クリーニングの専門店や、呉服店、あるいは信頼できる買取店などの査定士は、繊維の細かな構造や織り方、仕立ての技術から総合的に判断してくれます。無理に自分で検査をして、生地を傷めたり価値を下げたりしてしまう前に、知識のある第三者に客観的な評価をしてもらうことを検討しましょう。

保管前の確認事項

着物を収納する前に正絹かどうかを確認しておくことは、長期保存の成功に直結します。なぜなら、正絹と化学繊維では保管上のリスクが全く異なるからです。正絹は湿気に弱く、カビが生えやすいだけでなく、タンパク質を好む虫(ヒメマルカツオブシムシなど)の被害に遭いやすいという弱点があります。そのため、正絹であれば防虫剤や調湿効果のある桐タンスでの保管が必須となります。

一方で、化学繊維は虫食いの心配はほとんどありませんが、静電気を帯びやすく、ホコリを吸い寄せやすい性質があります。また、正絹と一緒に保管する場合、化学繊維の防虫剤への反応が正絹に悪影響を及ぼす可能性も考慮しなければなりません。たとう紙に包む前に、素材を明確にしておくことで、それぞれに最適なケアを選択できます。もし正絹であることが分かったら、定期的な「虫干し」を行うなど、天然素材ならではの手入れを心がけることで、数十年先まで美しい状態を保つことが可能になります。

目で見て分かる正絹の特徴

正絹の着物には、化学繊維には真似できない独特の美しさが備わっています。それは素材そのものが持つ力と、職人の技が組み合わさって生まれるものです。ここでは、視覚的に正絹を識別するための具体的なチェックポイントを細かく見ていきましょう。

光沢の自然さ

正絹の光沢は、よく「真珠のような光沢」と表現されます。これは絹糸の断面が角の丸い三角形をしており、光が内部に入り込んで複雑に反射(屈折)するためです。この構造により、光が当たった場所だけが光るのではなく、生地全体が奥深くから優しく輝いているように見えます。部屋の照明の下よりも、自然光の中で見たときに、その上品な輝きが最も顕著に現れます。

対して、ポリエステルなどの糸は断面が円形や扁平であることが多く、鏡のように光を跳ね返します。そのため、光が当たっている部分が白っぽく浮き上がって見えたり、合成樹脂特有のテカリが感じられたりします。正絹の光沢は、動いたときに色の濃淡がゆるやかに変化し、着る人の肌を綺麗に見せてくれる効果があります。もし光り方が一律で、どことなく不自然な反射を感じる場合は、化学繊維を疑ってみる必要があります。

色の深みと艶

正絹の染め上がりには、特有の「底艶(そこづや)」があります。天然のタンパク質繊維である絹は、染料との親和性が非常に高く、色が繊維の奥深くまでしっかりと定着します。そのため、深い紺色や鮮やかな赤色であっても、単に色が濃いだけでなく、色の層が重なっているような立体感のある発色になります。

化学繊維の場合、染料が繊維の表面に付着しているような状態になりやすいため、色がどこか平面的で、冷たい印象を与えることがあります。また、正絹は経年変化によって少しずつ色が落ち着き、アンティーク特有の味わい深い色調に変化していきますが、化学繊維はいつまでも染めたての鮮やかさが残り続けるため、古い着物でありながら色が不自然に浮いている場合は注意が必要です。着物を少し斜めから覗き込むようにして、色が生地に溶け込んでいるか、表面だけで光っているかを確認してみてください。

織り目の均一さ

織り目の状態からも、正絹の手がかりを得ることができます。特に手織りの正絹着物(紬など)の場合、糸の太さが微妙に不均一であったり、小さな節(ふし)があったりすることがあります。これは天然の蚕から取れる糸を使っている証拠であり、布地に独特の温かみと表情を与えています。

それに対して、機械で大量生産される化学繊維の生地は、糸の太さが完全に一定で、織り目も寸分の狂いなく均一です。あまりにも完璧すぎて「機械的」な印象を受ける場合は、化学繊維の可能性があります。ただし、現代の高級な正絹(縮緬や塩瀬など)は、機械織りであっても非常に精密に織られているため、均一さだけで判断するのは難しい場合もあります。その際は、織り目の隙間に見える繊維の毛羽立ちや、光の当たり方による影の出方を観察すると、天然繊維らしい不規則な揺らぎが見つかるはずです。

染めのぼかし具合

友禅染などの装飾が施された着物では、色の境界線である「ぼかし」に注目してください。正絹は吸水性が高いため、職人が筆で染料を乗せた際に、色が生地の上でゆるやかに滲み、非常に自然で滑らかなグラデーションが生まれます。この「ぼかし」の技術は正絹の特性を最大限に活かしたもので、絵画のような繊細な表現を可能にしています。

ポリエステルなどの化学繊維は、水分を吸収しにくいため、色が滲みにくく、境界線がパキッと硬くなりやすい傾向があります。プリント技術の向上により、見た目には綺麗なグラデーションを再現しているものも多いですが、よく見ると色の粒子が点状に見えたり、色の移行が段階的であったりすることがあります。職人の手仕事による、水に溶けるような柔らかい色の変化が見られるかどうかは、正絹であることの有力な証拠の一つと言えます。

裏地と縫いの仕上がり

着物本体だけでなく、裏地(胴裏や八掛)や縫い目も重要なヒントになります。一般的に、正絹の着物には正絹の裏地をつけるのが正式です。裏地を触ってみて、表地と同じようにしっとりとした質感があれば正絹の可能性が高まります。安価な着物やポリエステル着物の場合は、裏地にも滑りの良いポリエステルが使われていることがほとんどです。

また、縫い目にも注目してみましょう。正絹の着物は、多くの場合「和裁(わさい)」と呼ばれる手縫いで仕立てられています。手縫いの糸は、生地に馴染むように少し余裕を持って縫われており、生地を引っ張ったときに縫い目がわずかに動く柔軟性があります。化学繊維の着物はミシンでしっかりと縫われていることが多く、縫い目が非常に規則的で、生地との間に「遊び」が少ないのが特徴です。裏側の始末が丁寧になされているか、手縫いの温かみがあるかを確認することで、その着物が大切に作られた正絹であるかどうかの判断を補強できます。

手で触れて確かめる感覚のポイント

触覚による判断は、着物愛好家が最も頼りにする方法です。正絹に触れたときの感覚を一度覚えると、化学繊維との違和感に気づきやすくなります。五感を研ぎ澄ませて、生地が発するメッセージを受け取りましょう。

しっとりした手触り

正絹の手触りを一言で表すなら「しっとり」という言葉が最適です。これは、絹繊維を構成するフィブロインというタンパク質の周りを、セリシンという保湿成分が包み込んでいるためです(精練後もその特性は残ります)。手を置いたときに、生地が手のひらに吸い付くような、密度のある柔らかさを感じられたら、それは正絹の大きな特徴です。

化学繊維は、どれだけ技術が進化しても、どこか「カサカサ」とした乾いた質感が残ります。これはプラスチック由来の素材である以上、避けられない特徴です。冬の乾燥した時期に触ると、化学繊維はすぐに静電気を帯びて指先にまとわりつきますが、正絹は適度な水分を含んでいるため、静電気が起きにくく、常に落ち着いた状態を保ちます。目をつぶって、生地の表面をなでてみてください。指の腹に優しい湿り気のような安心感があれば、正絹である可能性が非常に高いです。

指先での滑り感

生地の表面を指先で滑らせたとき、正絹と化学繊維では「滑り」の質が異なります。正絹の滑りは、ただ滑らかなだけでなく、適度な「引っかかり(コシ)」があります。これは繊維の表面が完全に滑らかではなく、ミクロの単位で複雑な構造をしているためです。そのため、帯を締めたときに緩みにくく、着崩れしにくいという実用的な利点にもつながっています。

一方で、ポリエステルは「ツルツル」と滑りすぎてしまい、指を滑らせるとどこまでも止まらないような感覚があります。この極端な滑らかさは、かえって生地の軽薄さを感じさせる要因にもなります。また、生地を二枚重ねて指でこすってみてください。正絹同士であれば、互いに馴染み合ってしなやかに動きますが、化学繊維はカサカサと音がして、お互いに反発するような感覚があります。この「馴染みの良さ」こそが、正絹が最高級の衣料素材とされる理由です。

生地の弾力性

正絹は、天然繊維の中でも非常に高い弾力性と復元力を持っています。生地を手のひらでギュッと握ってみて、その後の反応を観察してください。正絹であれば、握った瞬間に「ギュッ」という手応えがあり、手を離すとゆっくりと元の形に戻ろうとする、弾力のあるシワが寄ります。このシワは角が立たず、ふんわりとした柔らかい線になります。

化学繊維の場合、反発力が強すぎてシワがすぐに消えてしまうか、逆に紙を折ったときのような鋭利で硬いシワが残ってしまう傾向があります。これは、プラスチックのように形状を記憶する性質が強いためです。また、正絹は横方向に引っ張るとわずかな伸び(伸縮性)があり、それが着たときの体の動きに対する柔軟性を生みます。化学繊維は引っ張ってもほとんど伸びず、無理に引くとパツパツとした突っ張りを感じます。この「粘りのある弾力」があるかどうかを確認してみてください。

毛羽立ちの程度

正絹は長い繊維(長繊維)からできていますが、天然素材であるため、表面にはごく微細な毛羽立ちが存在します。これは見た目には分かりにくいですが、肌に触れたときに「柔らかさ」として感じられます。使い込まれた正絹の着物は、この毛羽がさらに馴染み、カシミアのようなトロリとした手触りに変化していくことがあります。

ポリエステルなどの化学繊維は、工場で押し出された一定の太さの繊維(フィラメント)であるため、表面に毛羽立ちがほとんどなく、人工的な平滑さがあります。しかし、摩擦にはあまり強くなく、長年着用すると繊維が毛羽立つのではなく、毛玉(ピリング)ができたり、繊維が飛び出したりすることがあります。新品の状態であれば、表面の質感が「自然な柔らかさ」なのか、それとも「人工的な平滑さ」なのかを意識して触れてみると、素材の違いが見えてきます。

折り返しの戻り具合

着物の裾や袖口の折り返し部分を、指で軽くつまんで感触を確かめてみましょう。正絹は生地に「腰(こし)」がありつつもしなやかなので、折り曲げた部分にふっくらとした厚みが残ります。この適度なボリューム感が、着物を着たときの立体的なシルエットを作っています。

化学繊維の着物は、生地自体が薄くて硬いことが多いため、折り返し部分がペタッと潰れてしまっていたり、逆にアイロンで無理やりつけたような不自然な折り癖がついていたりすることがあります。また、正絹は湿気を含むと少し膨らむ性質があるため、梅雨時などはよりしっとりと重みが増しますが、化学繊維は環境による変化がほとんどありません。このように、生地の「厚み」と「戻りの強さ」を意識することで、天然の絹糸が持つ力強い生命力を感じ取ることができるはずです。

家庭で試せる簡易な検査と留意点

見た目や手触りだけではどうしても確信が持てないとき、家庭にあるものでさらに一歩踏み込んだ確認を行うことができます。ただし、これらは生地の一部を変化させる「破壊検査」に近いものも含まれるため、実施には細心の注意が必要です。

燃焼テストの確認項目

燃焼テストは、素材を特定するための最も確実な方法の一つです。手順としては、着物の裏側の縫い代など、切り取っても支障がない場所から糸を3〜5本ほど抜き取ります。ピンセットで糸を掴み、ライターやマッチの火にゆっくりと近づけてください。

確認すべきポイントは以下の3点です。

  1. 臭い:正絹(動物性タンパク質)は、髪の毛や羽毛が燃えたときと同じツンとする臭いがします。ポリエステルはプラスチックやビニールが溶けたような化学的な臭いがします。
  2. 燃え方:正絹は火を離すとすぐに燃焼が止まり、ジリジリと焦げるように燃えます。ポリエステルは溶けながら燃え続け、黒い煙が出ることがあります。
  3. 灰の状態:正絹の灰は黒く、指で潰すと簡単に粉々になります。ポリエステルは燃えた部分が硬い黒い玉(プラスチックの塊)になり、指で押しても潰れません。
    このテストを行う際は、火の扱いに十分注意し、必ず水を用意した場所で行ってください。

水滴での反応確認

正絹は、非常に水を吸いやすい性質を持っています。ごく少量の水を、目立たない部分(内揚げの余り部分など)に一滴落としてみてください。正絹であれば、水滴はすぐに生地に染み込み、その部分の色が濃く変わります。そして、乾いた後には、その輪郭が「水ジミ(輪染み)」として残ることが多いです。

これに対して、ポリエステルなどの化学繊維は、繊維自体が水分を吸収しないため、水滴が玉のように弾かれるか、染み込んでも乾けば跡形もなく元通りになります。ただし、最近の正絹着物には「パールトーン加工」などの強力な撥水加工が施されているものもあり、その場合は正絹であっても水を弾いてしまいます。また、縮緬などの生地は水に濡れると激しく縮む性質があるため、このテストを行う際は「縮んでも困らない場所」で、かつ「ほんの少量の水」で試すことが鉄則です。

光にかざす透け具合

着物を広げ、背後から強い光(窓からの日光やライト)をかざして透かして見てください。正絹の繊維は太さがわずかに不規則で、光の通り方にムラがあります。特に手紡ぎの糸を使った着物であれば、繊維の中に節や陰影が見え、まるで木漏れ日のような柔らかい透け方になります。

化学繊維の生地は、均一な糸で精密に織られているため、光の透け方が非常に一律で、影の出方も規則的です。まるで薄いプラスチックの膜を通しているような、単調な透け感に見えることがあります。また、正絹は光を透過させるだけでなく、繊維の内部で光を乱反射させるため、透けて見える部分の縁が少しぼやけて見えます。この「光の揺らぎ」を感じ取れるかどうかは、天然素材を見分けるための一つの目安になります。

拡大鏡での繊維観察

もし手元にスマートフォンのマクロレンズや、10倍程度の拡大鏡があれば、繊維の端を覗いてみてください。正絹の糸は、非常に細い繊維(フィブロイン)が束になってできています。古くなった着物や擦れた部分の糸先を見ると、細かく枝分かれしたような、ふんわりとした毛羽立ちが見えるはずです。

一方、化学繊維は、一本の太い棒のような繊維であったり、あるいは不自然にねじられたプラスチックの束のように見えたりします。拡大して見たときの「繊維の細さ」と「質感の柔らかさ」は、正絹が圧倒的です。また、正絹の糸は断面が三角形に近い不定形であるため、拡大して光を当てると、キラキラとした多面的な輝きを放ちます。化学繊維は円柱状であることが多いため、光が一本の線のように反射して見えることが特徴です。

ラベルと糸端の確認

現代の着物であれば、素材表示のラベルがついていることがあります。まずは品質表示を確認しましょう。「絹100%」や「正絹」と書かれていれば安心です。中古品などでラベルがない場合は、着物の内側の「糸端」を探してみてください。

着物を仕立てる際に使う「縫い糸」も、正絹の着物には正絹の糸を使うのが基本です。縫い糸を一本引き抜いて燃焼テストをしてみるのも有効な手段です。もし生地が正絹なのに、縫い糸がポリエステルである場合は、後からミシンで手直しされたものか、あるいは生地自体も化学繊維である可能性を疑うきっかけになります。また、八掛(はっかけ)の裏側などに「証紙(しょうし)」のコピーが貼り付けられていることもあります。細部まで丁寧に見渡すことで、素材を特定するためのヒントが隠されていることがあります。

店舗や専門家に依頼する際の注目点

大切な着物の素材や価値を確実に知りたいときは、やはりプロの目利きに頼るのが一番です。しかし、どのような場所に依頼し、どのような点に注目すべきかを知っておくことで、より納得感のある鑑定を受けることができます。

鑑定書や証明の確認

高級な正絹着物を購入したり譲り受けたりした場合、まず探すべきは「鑑定書」や「産地証明書」です。特に「本場大島紬」や「本場結城紬」などの有名産地のものには、各組合が発行する厳しい基準をクリアした証である証紙が必ず添えられています。

証紙には、素材が正絹であることはもちろん、どのような技法で織られたか、誰が作ったかなどの詳細が記されており、これがあるだけでその着物の正絹としての価値は100%保証されます。店舗に相談に行く際は、この証紙の有無が最大の鍵となります。もし証紙がない場合でも、専門家はその着物の「風合い」や「染めの技法」から産地を特定し、正絹であることを裏付けてくれます。証紙がないからといって諦めず、まずは専門の知識を持つプロに見せてみましょう。

産地や証紙の有無

着物の世界には、独自のマークが記された「証紙」というシステムがあります。

  • 伝統工芸マーク:経済産業大臣が指定する伝統的工芸品であることを示します。
  • 産地組合のマーク:その産地で正しく作られたことを証明します(例:大島紬の「地球印」など)。
  • 絹マーク:日本絹業協会が認めた純絹製品であることを示します。

これらは着物の「たとう紙」の中や、布端(反端)に貼り付けられています。仕立て上がった着物の場合は、ハギレとして一緒に保管されていることが多いです。店舗へ相談に行く際は、これらの紙切れ一つでも重要な証拠になるため、必ず持参するようにしてください。証紙があることで、素材の見分けという段階を飛び越えて、その着物が持つ歴史的・工芸的な価値まで明確にすることができます。

顕微鏡での繊維診断

最近の買取専門店や呉服店の一部では、デジタル顕微鏡(マイクロスコープ)を使用して繊維をその場で診断してくれるサービスがあります。肉眼では見えない繊維の形を拡大することで、正絹特有の「三角形の断面」や「複雑な繊維の束」を確認します。

この方法は、生地を一切傷つけることなく(非破壊検査)、科学的な根拠を持って正絹であることを証明できるため、非常に信頼性が高いです。また、化学繊維の断面は非常に均一な円形や楕円形をしているため、モニター越しにその違いを自分の目で確認できるのも安心感につながります。特に、東レシルックなどの高級化繊と正絹を見分けたい場合には、この顕微鏡診断が最も有力な手段となります。依頼する前に、そのような設備があるか、あるいは素材診断が可能かを確認してみると良いでしょう。

和裁士や鑑定士の目利き

機械による診断も優れていますが、長年着物に携わってきた和裁士や鑑定士の「目利き」には、数値化できない凄みがあります。彼らは着物を一目見ただけで、その「重み(落ち感)」や「身のこなしに伴う生地の揺れ方」で素材を瞬時に判断します。

特に注目されるのが「仕立て」です。正絹の着物は、生地の伸縮に合わせて手縫いで細かく調整しながら縫い上げられています。この「手の加わり方」を見れば、その生地が正絹であるかどうかが自ずと分かると言います。また、鑑定士は生地の裏側や、普段は見えない縫い代の始末までチェックします。質の良い正絹ほど、見えない部分の処理も丁寧になされている傾向があります。プロの経験に基づいた多角的な視点は、単なる素材チェック以上の「その着物の格」を教えてくれる貴重な情報源となります。

査定で見る評価項目

もし着物の売却を目的として正絹かどうかを確認したい場合、査定士は素材以外にも多くの項目をチェックします。

  • 素材の純度:正絹100%か、交織(絹と他の繊維の混紡)か。
  • 保存状態:カビ、シミ、ヤケ(変色)、虫食いがないか。
  • サイズ:現代人が着られる裄(ゆき)や丈があるか。
  • 作家・ブランド:有名作家の落款(らっかん)や有名染元の作品か。

正絹であることが確認できても、シミやカビがひどい場合は価値が下がってしまいます。逆に、化学繊維であっても、ブランド品であったり非常に状態が良かったりすれば、一定の評価がつくこともあります。素材の見極めはあくまでスタート地点であり、その後のメンテナンスがいかに重要であるかを、査定の現場は教えてくれます。

【おすすめ紹介】着物のお手入れ・判別グッズ

着物の素材を確認したり、正絹を大切に守るために役立つ、現在入手可能な便利グッズをご紹介します。

商品名用途・特徴公式サイト/詳細
Kenko スマートフォン用マクロレンズ繊維の拡大観察に最適。スマホで簡単に撮影可能。Kenko公式サイト
きものKeeper(プロガード)正絹に大敵な湿気・カビ・虫を防ぐ高機能保存袋。機能性包装材料公式サイト
和服専用・正絹洗剤「シルクウォッシュ」正絹の風合いを損なわず自宅でケアできる専用洗剤。[各ECサイト・呉服店にて販売中]

正絹の見分け方を日常で活かすための指針

着物が正絹かどうかを見分けられるようになることは、単なる知識の習得ではありません。それは、日本の伝統文化である着物に対する理解を深め、より豊かに楽しむための鍵となります。素材を正しく知ることで、着物との付き合い方はもっと自由で、かつ丁寧なものに変わっていきます。

見分け方のポイントを日常で活かすためには、まず「たくさんの本物に触れること」から始めてください。美術館で名品を見るのも良いですが、呉服店で反物を触らせてもらったり、リサイクルショップで様々な時代の着物を手に取ってみたりすることも、感覚を養うための素晴らしい修行になります。正絹の「温もり」と、化学繊維の「利便性」。どちらが良い悪いではなく、それぞれの特性を理解した上で、場面に合わせて使い分けるのが現代の着物通の楽しみ方です。

自分の持っている着物が正絹であると分かれば、それに対する愛着も一層深まるでしょう。カビさせないように風を通し、虫がつかないように気を配る。その手間さえも、天然素材と共に生きる贅沢な時間として楽しめるようになれば、あなたはもう立派な着物愛好家です。今回ご紹介した見分け方を参考に、ぜひお手元の着物とゆっくり対話してみてください。その布地の奥に、日本の職人たちが守り続けてきた情熱と、シルクという素材が持つ神秘的な美しさをきっと見出せるはずです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日本の伝統文化について、由来や意味を知ることが大好きです。 伝統工芸、風習、慣習の背景を知るたびに、日常の見え方が少し変わる気がしています。生活の中で楽しめる知恵が見つかるといいなと思います。
忙しい毎日の中で、ほっと一息つけるような情報を届けられたらうれしいです。

目次