エポキシで金継ぎ!やり方と接着のコツや道具の選び方

大切にしていた器が割れてしまったとき、諦めて捨ててしまうのは悲しいものです。そんな器に新しい命を吹き込むのが「金継ぎ」ですが、伝統的な漆を使う方法は時間も手間もかかります。そこで今回は、初心者でも挑戦しやすいエポキシ接着剤を使った金継ぎのやり方を詳しくご紹介します。

目次

金継ぎのやり方とエポキシの使い方をわかりやすく紹介

エポキシ樹脂を使用した金継ぎは「簡易金継ぎ」とも呼ばれ、伝統的な漆に比べて乾燥待ちの時間が短く、かぶれの心配がないのが大きなメリットです。接着力が強く、仕上がりも美しいため、現代の暮らしに合った修復方法として人気を集めています。まずは全体の流れと必要な知識を押さえておきましょう。

必要な材料一覧

エポキシ金継ぎを始めるには、ホームセンターや手芸店で手に入る材料を揃える必要があります。基本的には「接着」「埋める」「飾る」という三つの工程に合わせて材料を準備します。

  • エポキシ接着剤:割れた断面をくっつけるために使用します。2液混合タイプが一般的です。
  • エポキシパテ:欠けてしまった部分を埋めて形を作るために使用します。粘土のような質感のものが扱いやすいです。
  • 合成漆(新うるしなど):金粉を定着させるための塗料として使います。
  • 金粉・銀粉:仕上げの装飾に使います。本物の金粉のほか、安価な真鍮粉(消金粉)も市販されています。
  • 薄め液:合成漆の粘度を調整したり、筆を洗ったりするために使います。
  • マスキングテープ:接着剤が余計な場所につかないよう保護するために使用します。

これらの材料は、初めての方には「金継ぎキット」としてセット販売されているものを購入するのもおすすめです。必要な分量が少しずつ入っているため、無駄なく始められます。

作業時間の目安

エポキシ金継ぎの最大の魅力は、そのスピーディーさにあります。伝統的な本漆の場合、一つの工程ごとに数日から数週間の乾燥期間が必要で、完成までに数ヶ月かかることも珍しくありません。しかし、エポキシを使った方法であれば、最短で1日から2日程度で完成させることができます。

具体的な作業時間の配分は以下の通りです。

  1. 下準備と接着:約30分〜1時間。接着剤が硬化するまで数時間待ちます。
  2. 欠けの充填と成形:約30分。パテが固まるまでさらに数時間待ちます。
  3. 研磨と段差の調整:約30分。表面を滑らかにする重要な作業です。
  4. 仕上げ(塗りと粉まき):約30分〜1時間。合成漆が完全に乾燥するまで24時間以上置きます。

実際の作業時間そのものは短いですが、各工程で接着剤や塗料がしっかり固まるのを待つ「待ち時間」が重要です。焦らずにしっかり硬化させることで、丈夫で美しい仕上がりになります。

エポキシの種類別特徴

金継ぎで使用するエポキシ樹脂には、大きく分けて「液体接着剤タイプ」と「パテタイプ」の二種類があります。修復したい器の状態に合わせて使い分けるのが成功の秘訣です。

液体タイプは、2種類の液体を混ぜ合わせることで硬化が始まります。さらさらしたものから粘り気のあるものまでありますが、割れた断面同士を密着させるのに適しています。5分で固まる速乾型から、30分以上かけてゆっくり固まるタイプまであるため、作業の慣れに合わせて選びましょう。

パテタイプは、2色の粘土のような素材を練り合わせて使います。こちらは「形を作る」ことに特化しており、器の縁が大きく欠けてしまった場合や、破片がなくなってしまった場所を補うのに役立ちます。硬化後はプラスチックのように硬くなるため、ヤスリで削って器本来の形に整えることができます。

衛生と安全上の注意

エポキシ樹脂は化学製品ですので、取り扱いには注意が必要です。まず作業中は、樹脂特有の臭いが発生することがあるため、必ず換気の良い場所で行ってください。また、皮膚に直接触れると荒れてしまう可能性があるため、使い捨てのビニール手袋を着用することをお勧めします。

特に注意したいのが「食器としての安全性」です。一般的なエポキシ接着剤は、完全に硬化した後は安定しますが、食品衛生法の基準をクリアしていないものも多いです。直接口に触れる場所や、熱いスープを入れる器に使用する場合は、食品衛生法に適合した材料を選ぶか、修復後に高熱を加えないといった工夫が必要です。

万が一、目に入ったり大量に皮膚についたりした場合は、すぐに流水で洗い流し、必要に応じて医師の診断を受けてください。小さなお子様やペットがいるご家庭では、材料の保管場所にも十分配慮しましょう。

仕上がりと耐久性の比較

エポキシ金継ぎの仕上がりは、非常にシャープで光沢のある印象になります。伝統的な漆が持つしっとりとした質感とは異なりますが、現代的な陶磁器やガラス製品にはこのパキッとした輝きがよく似合います。

耐久性については、エポキシ樹脂は非常に強力な接着力を持っているため、通常の使用であれば簡単に剥がれることはありません。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 熱への耐性:多くのエポキシ樹脂は100度以上の熱に弱いため、電子レンジや食洗機の使用は避けるべきです。
  • 経年変化:長期間使用していると、樹脂部分がわずかに変色することがあります。
  • 柔軟性:漆に比べると硬くて柔軟性に欠けるため、大きな温度変化で器本体と樹脂の間に隙間ができることが稀にあります。

日常使いの器をさっと直して再び使うという目的においては、エポキシ金継ぎは十分な強度と美しさを備えた優れた手法と言えます。

最初に揃える道具とエポキシの選び方

金継ぎを始めるにあたって、まず悩むのが道具選びです。特に中心となるエポキシ接着剤は種類が豊富で、どれを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。器の用途や割れ方に合わせた最適な道具選びのポイントを整理しました。

エポキシの主な種類

金継ぎに使いやすいエポキシ接着剤は、主に硬化時間によって分類されます。

タイプ特徴向いている作業
5分硬化型すぐに固まるため、小さな破片の接着に便利小さな欠け、点のような接着
30分〜60分型位置調整がしやすく、初心者でも焦らず作業できる大きな割れ、複数の破片の繋ぎ合わせ
パテタイプ粘土状で肉盛りができる破片が欠損している箇所の成形

初心者の場合は、30分程度で固まり始めるタイプが一番扱いやすいです。5分型は非常に便利ですが、混ぜ合わせた後にのんびりしていると、塗る前に固まってしまうことがあるため注意が必要です。また、色は「透明(クリア)」タイプを選びましょう。色が着いているものは、後で金粉を塗る際に影響が出てしまうことがあります。

食品対応と規格確認

「直したお皿で食事ができるのか」という点は、多くの方が最も気にするポイントでしょう。一般的な工業用接着剤は食品への使用を想定していません。そのため、食器に使用する場合は「食品衛生法 器具及び容器包装の規格基準」に適合した製品を選ぶのが安心です。

最近では、金継ぎ人気を受けて、食品衛生法に適合したエポキシ接着剤や合成漆がセットになった「食器用金継ぎキット」も販売されています。公式サイトやパッケージの裏面を確認し、「食品衛生法適合」や「食器に使用可」という記載があるかチェックしましょう。

もし適合品が見つからない場合は、お皿の裏側の高台(こうだい)部分や、食品が直接触れない花瓶や置物の修復から練習を始めるのが良いかもしれません。

接着用の基本工具

接着剤以外に、作業をスムーズに進めるための工具も揃えておきましょう。どれも100円ショップや家庭にあるもので代用可能です。

  • つまようじ・竹串:接着剤を混ぜたり、細い断面に塗布したりするのに必須です。
  • マスキングテープ:接着した破片を固定したり、余分な接着剤が広がるのを防いだりします。
  • カッターナイフ:はみ出して固まった接着剤を削り取るのに使います。
  • ペーパープレート(紙皿):接着剤を出すパレットとして使います。
  • 無水エタノール(または除菌シート):断面の汚れや油分を拭き取るのに使います。

これらは作業中にすぐ手に取れる場所にまとめておくと便利です。特に接着剤を塗った後は手が離せなくなることが多いため、準備万端の状態でスタートすることが成功の秘訣です。

充填と成形用の器具

破片が足りない場合や、大きな穴が空いている場合は、肉盛りをするための器具が必要になります。

メインとなるのはエポキシパテですが、これを器のカーブに合わせて形を整えるために「スパチュラ(ヘラ)」があると非常に便利です。金属製の細いヘラがあれば、指では届かない細かい部分の造形も思い通りに行えます。スパチュラがない場合は、アイスの木のスプーンを削ったものや、使い古したバターナイフでも代用できます。

また、パテを扱う際は少し水をつけると表面を滑らかに整えやすくなります。小さな水入れも用意しておくと良いでしょう。成形工程は、後の「研ぎ」の作業を楽にするためにも、この段階でできるだけ器の元の形に近づけておくのがコツです。

研磨と磨きの消耗品

金継ぎの美しさは、研磨工程で決まると言っても過言ではありません。表面をツルツルに磨き上げるための消耗品を準備しましょう。

  • 耐水サンドペーパー(紙やすり):400番、800番、1500番程度の三種類があると理想的です。
  • スポンジ研磨材:曲面の多い器を磨く際に、形にフィットして便利です。
  • コンパウンド(研磨剤):最終的な艶出しに使用します。
  • ウエス(布切れ):磨きカスを拭き取ったり、コンパウンドを塗布したりするのに使います。

最初は粗い番手(数字が小さいもの)で大きく削り、徐々に細かい番手(数字が大きいもの)に変えていくことで、接着部分が器と一体化したような滑らかな仕上がりになります。

【おすすめ紹介】人気の金継ぎ材料・キット

商品名特徴公式サイトURL
つぐキット食品衛生法適合の材料で安心。説明書が非常に丁寧https://kintsugi-kit.com/
播与漆行 簡易金継ぎセット老舗漆店が提案する、使いやすさを追求したセットhttps://www.urushi.com/
セメダイン エポキシパテ補修の定番。成形しやすくどこでも手に入るhttps://www.cemedine.co.jp/

接着前の下処理からエポキシ塗布までの流れ

金継ぎにおいて、実は接着そのものよりも「下処理」が仕上がりを左右します。汚れや油分が残っていると、どんなに強力な接着剤でも剥がれてしまう原因になります。器の声を聴くように、一つひとつの工程を丁寧に進めていきましょう。

割れや欠けの状態確認

まず最初に、バラバラになった破片を一度パズルのように組み立ててみます。どの破片がどこに収まるのか、欠損している部分はないかを確認しましょう。

この時、破片の端が鋭利になっていることがあるので、怪我をしないよう注意してください。もし破片が細かすぎて戻せない場所や、完全になくなっている場所が見つかっても大丈夫です。そこは後でパテを使って埋めることができます。

また、接着の順番もあらかじめ考えておきます。複雑な割れ方の場合は、一度に全部をくっつけようとせず、小さなグループごとに接着していくのが失敗を防ぐコツです。接着のシミュレーションをすることで、「最後にこの破片が入らない!」というトラブルを未然に防ぐことができます。

接着面の清掃と脱脂

器の状態が確認できたら、次は「掃除」です。割れた断面には、これまでの使用でついた油分や茶渋、ホコリなどが付着しています。これらは接着の邪魔になるため、徹底的に取り除きます。

一番確実な方法は、無水エタノールを染み込ませた綿棒やウエスで断面を丁寧に拭くことです。エタノールがない場合は、中性洗剤で洗った後にしっかりと乾燥させてください。

特に陶器(土もの)の場合は、断面に水分が残りやすいので、ドライヤーで乾かすなどして完全に水分を飛ばしましょう。指の油分がつかないよう、掃除した後はなるべく断面に触れないように作業を進めるのがポイントです。

接着剤の古い残り処理

もし、以前に別の接着剤で直そうとして失敗した器を再修復する場合は、その古い接着剤を完全に取り除く必要があります。古い接着剤が残っていると、新しいエポキシ接着剤が密着できません。

カッターの刃先や、お湯でふやかした後のヘラを使って、断面を傷つけないように慎重にこそげ落とします。頑固な場合は、市販の「接着剤剥がし液」を使用するのも手ですが、器の染料を傷めないか目立たない場所でテストしてから使いましょう。

断面を触ったときに、ザラザラとした素地の感触が戻っていれば準備完了です。このひと手間を惜しまないことで、修理後の耐久性が格段に向上します。

エポキシの混合比と硬化時間

いよいよエポキシ接着剤を混ぜ合わせます。エポキシ接着剤は通常、A液とB液の二つのチューブに分かれています。この二つを「1:1」の正確な比率で混ぜることが最も重要です。

比率がずれると、いつまで経ってもベタベタして固まらなかったり、強度が極端に落ちたりすることがあります。紙皿の上に同じ長さだけ並べて出し、つまようじで円を描くようにしっかり、白っぽくなるまで混ぜ合わせましょう。

混ぜ合わせた瞬間から硬化へのカウントダウンが始まります。冬場は少し遅く、夏場は早くなる傾向がありますので、室温にも気を配ってください。もし混ぜている最中に少し熱を感じたら、それは化学反応が進んでいる証拠です。

仮固定と圧着の方法

断面に薄く均一に接着剤を塗ったら、破片を正確な位置に合わせます。この時、接着剤が少しはみ出すくらいがちょうど良い分量です。

合わせた後は、接着剤が固まるまでの間、破片がずれないように固定する必要があります。ここで活躍するのがマスキングテープです。器をまたぐようにテープをピンと張って、破片同士を押し付けるように固定します。

重力の向きも考慮してください。立てて置いておくと破片が重みでずれてしまう場合は、砂を入れた箱に器を埋めて、最適な角度で固定するといった工夫も有効です。完全に硬化するまでは、振動を与えない静かな場所で休ませてあげましょう。

盛り付けと研ぎで仕上がりを良くするコツ

接着が終わったら、いよいよ仕上げに向けた調整に入ります。この工程を丁寧に行うことで、金継ぎ特有の「景色」としての美しさが引き立ちます。表面の凹凸をなくし、金粉が美しくのるための土台作りを行いましょう。

硬化後の研ぎ工程

接着剤が完全に固まったら、はみ出した余分な部分を削り取ります。まずはカッターの刃を寝かせて、盛り上がった接着剤を大まかにカットします。この時、器の表面を傷つけないよう、刃を動かす方向に注意してください。

次に、耐水サンドペーパーを使って磨きます。ペーパーを小さく切り、数滴の水をつけながら接着部分を優しくこすります。400番から始め、指で触ったときに境目が分からないくらいまで滑らかにしていきます。

「削りすぎかな?」と思うかもしれませんが、ここでしっかりと段差をなくしておくことが、最後の金色の線を細く美しく見せるための最重要ポイントです。器の絵柄を削りすぎないよう、集中して作業しましょう。

段差処理と微調整

大きな欠けをパテで埋めた場所は、乾燥後に収縮してわずかな窪みができることがあります。また、研磨の途中で小さな気泡が見つかることもあります。

そんな時は、もう一度少量のパテや接着剤を盛って「穴埋め」を行います。一度で完璧にしようと思わず、二度、三度と塗り重ねては研ぐ作業を繰り返すのが、プロのような仕上がりに近づく近道です。

特に器の縁(口をつける部分)は、厚みが変わると使い心地に影響します。横から見たり、指でなぞったりして、器本来のカーブが再現されているか入念にチェックしましょう。最後は800番以上の細かいペーパーで仕上げ、表面を絹のような手触りに整えます。

金粉の付け方準備

研磨が完了し、器の表面が滑らかになったら、いよいよ金色の線を引く準備です。まず、作業場所を整え、ホコリが舞わないように掃除をします。

次に、合成漆と金粉(または真鍮粉)を用意します。エポキシ金継ぎでは、エポキシの上に直接粉をまくのではなく、接着剤をガイドにして「合成漆」を塗り、その粘着力で粉を定着させるのが一般的です。

使用する筆は、極細の面相筆を選びましょう。また、粉をまくための「あしらい毛棒」や、柔らかい化粧用の筆があると便利です。金粉は非常に軽く、鼻息で飛んでしまうほどですので、エアコンの風が当たらない場所で作業するようにしましょう。

上塗り材の種類と特徴

仕上げに使用する「上塗り材」にはいくつか選択肢があります。

  • 新うるし(合成漆):手に入りやすく、乾燥が早い。色が豊富で、本漆に近い質感が出せる。
  • エポキシ系金継ぎ塗料:さらに速乾性を求める場合に。強度が非常に高い。
  • 金泥(きんでい):あらかじめ粉が混ざっているタイプ。手軽だが、立体感は控えめになる。

初心者に最もおすすめなのは「新うるし」の透明、または透色です。これに少量の金粉を混ぜて塗る方法と、塗った後に上から粉を振りかける方法がありますが、粉を振りかける方が「金継ぎらしい」キラキラとした輝きが強調されます。

仕上げ研磨と艶出し材

粉をまいてから24時間以上(できれば数日間)しっかり乾燥させたら、表面に残った余分な粉を柔らかい筆や水洗いで落とします。この瞬間、鮮やかな金色の線が現れるのは感動的な体験です。

もし輝きをさらに増したい場合は、コンパウンド(研磨剤)を使って優しく磨き上げます。ただし、あまり強くこすりすぎるとせっかくの金粉が剥げてしまうため、力を抜いて優しく磨くのがコツです。

最後に、食品衛生法に適合したコーティング剤を上から薄く塗ると、金粉の剥落を防ぎ、より長く美しさを保つことができます。これで、世界に一つだけの再生された器の完成です。

トラブル対応と長持ちさせる手入れの方法

せっかく直した器ですから、末長く大切に使いたいものです。作業中に起こりやすいトラブルの対処法と、修理後の器を長持ちさせるためのお手入れルールを覚えておきましょう。

気泡や隙間の処置

接着剤を混ぜる際や塗る際に、小さな空気が入って「気泡」ができてしまうことがあります。そのままにすると見た目が悪いだけでなく、汚れが溜まる原因にもなります。

もし小さな穴を見つけたら、つまようじの先に接着剤をつけて、穴の中に押し込むようにして埋めてください。その後、再度研磨を行えば綺麗に治ります。

破片を合わせた後にわずかな「隙間」ができてしまった場合は、さらさらした液体タイプのエポキシ接着剤を隙間に流し込む「流し込み接着」が有効です。毛細管現象で接着剤が奥まで浸透し、しっかりと固定してくれます。

色むらと色合わせの手順

仕上げの金色の線が、場所によって色が濃かったり薄かったりする「色むら」が気になることがあります。これは、下地の色が透けて見えているか、粉のつき方が不均一なことが原因です。

対処法としては、一度乾いた上からもう一度薄く合成漆を塗り、再度粉をまく「二度塗り」を行うのが最も効果的です。また、銀粉を使う場合は黒色の下地を、金粉を使う場合は赤や茶色の下地をあらかじめ塗っておくと、発色が格段に良くなり、深みのある色合いになります。自分の器のベースの色に合わせて、下地の色を工夫してみるのも楽しい作業です。

剥がれやひびの再接着

使用しているうちに、もし接着した部分が剥がれてしまった場合は、慌てずに再度下処理からやり直しましょう。剥がれた断面をよく観察し、接着剤が器の素地から剥がれているのか、それとも接着剤自体が割れているのかを確認します。

素地から剥がれている場合は、脱脂が不十分だった可能性があります。より念入りに洗浄・乾燥させてから再接着してください。また、細かな「ひび」が入ってしまった場合は、早めに液体接着剤を染み込ませて補強することで、大きな破損を未然に防ぐことができます。金継ぎは一度直して終わりではなく、器を育てていく過程だと考えて、気楽に向き合ってみてください。

強度と耐久性の確認基準

修理が終わった器が、本当に使える状態かどうかを確認する基準をいくつかご紹介します。

  • 指で軽く弾く:繋いだ部分が「カチッ」と高い音がすれば、しっかり接着されています。鈍い音がする場合は、中に隙間があるかもしれません。
  • ぬるま湯に浸ける:30分ほど浸けてみて、接着部分がふやけたり、臭いが出たりしないか確認します。
  • 爪で軽く押す:接着剤やパテが十分に硬化していれば、爪の跡がつくことはありません。

これらのチェックをクリアすれば、日常の食卓に戻す準備は万端です。ただし、直した器はあくまで「修理品」であることを忘れず、無理な負荷はかけないようにしましょう。

日常の手入れと保管方法

エポキシ金継ぎをした器には、以下の三つの「NG」があります。これらを守るだけで、寿命がぐんと延びます。

  1. 電子レンジ・オーブンに入れない:急激な熱変化で樹脂が膨張し、剥がれる原因になります。
  2. 食洗機・乾燥機を使わない:高温の洗浄液と熱風は、エポキシと合成漆の大敵です。
  3. 長時間水に浸けっぱなしにしない:和紙のように水を吸うわけではありませんが、長時間放置すると接着面から劣化しやすくなります。

洗う時は柔らかいスポンジを使い、優しく手洗いしてください。洗った後はすぐに水分を拭き取って乾燥させます。また、他の器と重ねて収納する際は、金継ぎ部分が傷つかないよう、間にキッチンペーパーなどを挟むと安心です。

金継ぎでエポキシを使う際のチェックリスト

最後に、作業を始める前や途中で確認したい重要なポイントをリストにまとめました。

  • 換気はできているか?(化学臭対策)
  • 手袋は用意したか?(手荒れ防止)
  • 接着剤の比率は正確か?(硬化不良防止)
  • 断面の油分はしっかり取ったか?(接着力アップ)
  • 食器用の安全な材料か?(衛生面の確認)
  • 硬化時間は十分に取ったか?(焦りは禁物)

エポキシ金継ぎは、手順さえ守れば誰でも美しい仕上がりを楽しむことができる素晴らしい技術です。傷ついてしまった器を、より愛おしい存在へと変えてくれる金継ぎの時間を、ぜひ楽しんでください。お気に入りの器が、金色の輝きとともに再びあなたの食卓を彩る日を応援しています。

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この記事を書いた人

日本の伝統文化について、由来や意味を知ることが大好きです。 伝統工芸、風習、慣習の背景を知るたびに、日常の見え方が少し変わる気がしています。生活の中で楽しめる知恵が見つかるといいなと思います。
忙しい毎日の中で、ほっと一息つけるような情報を届けられたらうれしいです。

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